疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ)

目次
1疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ)
病名 | 疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ) |
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英語名 | Yellow patch, Winter patch |
学名 | Rhizoctonia cerealis (teleomorph Ceratobasidium cereale) |
病原菌 | 菌糸幅 2.5 μm ~ 5.3 μm,平均 4.1 μm |
被害芝草種 | 寒地型芝(ベントグラス、ブルーグラス、ライグラスなど) |
2病原菌特徴
病徴
芝草に直径 20 ~ 50 cm の円形パッチが散在して発生する。パッチは黄色(イエローパッチ)または外周が褐色(ウインターパッチ)を呈し、雨後や散水後、あるいは曇天時には特に目立つ。症状は主に地上部に限られ、芝を枯死させるほどではないが、美観を損なう。特に播種後1~2 年の若い芝では、夏季に発生する葉腐病(ブラウンパッチ)のように不整形の大型パッチが形成され、被害が大きくなる傾向がある。ミクロドキウムパッチと似ているが、本病はパッチが大きく色が薄いことで区別できる。
発生時期
晩秋~早春の平均気温約18℃以下で発生し、春の気温上昇とともに自然回復する。
発生条件
低温(10~18℃)かつ多湿な環境で発生しやすく、土壌表層が湿潤で下層が乾燥している場合に特に見られる。窒素肥料の過剰施用やサンドグリーンで発生しやすい。また防寒シートを長期間かけ続けると激発することがある。菌はサッチ層を通じて拡散し、排水不良や過湿状態が長く続くと感染が広がる。
3防除
予防対策
- サッチ除去: 定期的に行い、芝生表層の通気性を保つ。
- 施肥管理: 窒素成分に偏らないようバランスの取れた施肥計画を立てる。
- 冬季の灌水: 生育が緩慢な時期でも適切な灌水を継続し、乾燥ストレスを防ぐ。
- 予防散布: 病害発生リスクが高い場合は予防的な殺菌剤散布を検討する。
治療対策
通常、本病によって枯死することはほとんどない。ただし防寒シートをかけ、長く放置すると症状がひどくなることがある。殺菌剤を散布しても冬は芝の生長が遅いので、病斑が消えるのに時間がかかる。
4参考写真

写真1:発病初期のパッチ型症状

写真2:2核のリゾクトニア菌の菌糸(矢印:核)

写真3:褐色リング型症状

写真4:温度による生育速度
菌糸生育温度
左から35,30,25,20,15,5℃下で11日間培養
試験管につけた●印は伸長した菌叢の先端部

写真5:黄色リング型症状

写真6:菌叢とその上に形成された菌核数の菌株による違い
(右2枚:リング型,左2枚:パッチ型)

写真7: 葉の周りに蔓延した菌糸

写真8:発生初期~中期における菌糸の葉面からの侵入

写真9:罹病葉内に伸張する菌糸

写真10:黄色のパッチ(中央部:ペレニアルライグラス上)と
褐色のパッチ(周り:クリーピングベントグラス上)

写真11:湿室内で形成させた気中菌糸

写真12:各種の病斑

写真13:木立に囲まれた日当たりの悪いサブグリーン

写真14:同左のサブグリーンは遅くまで朝露が残り、本病が多発

写真15:防霜ネットを長期間かけ放置したサブグリーンに大発生したイエローパッチ