疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ)
目次
1疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ)
病名 | 疑似葉腐病(イエローパッチ,ウインターパッチ) |
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英語名 | Yellow patch,Winter patch |
学名 | Binucleate Rhizoctonia AG-D(Ⅰ)
telemorph Ceratobasidium cereale
(Syn.Rhizoctonia cerealis) |
病原菌 | 菌糸幅2.5μm~5.3μm,平均4.1μm |
写真1:発病初期のパッチ型症状
写真2:2核のリゾクトニア菌の菌糸(矢印:核)
写真3:褐色リング型症状
写真4:温度による生育速度
菌糸生育温度
左から35,30,25,20,15,5℃下で11日間培養
試験管につけた●印は伸長した菌叢の先端部
写真5:黄色リング型症状
写真6:菌叢とその上に形成された菌核数の菌株による違い
(右2枚:リング型,左2枚:パッチ型)
写真7: 葉の周りに蔓延した菌糸
写真8:発生初期~中期における菌糸の葉面からの侵入
写真9:罹病葉内に伸張する菌糸
2診断のポイントと対策
- 直径20~50cmの円形パッチ(写真1,3,5参照)がターフ上に散在。3月下旬以降に自然治癒。
- パッチが黄色を呈して(写真10参照)イエローパッチと呼び、パッチの外周部が褐色を呈して(写真3参照)ウインターパッチとも言う。両者とも、パッチの色が薄いので、少しはなれて斜めから見たり、雨後や散水後、あるいは曇天時に観察すると良い。
- 侵害は地上部に限られて被害は軽いが、発生したターフの美観を損なう。播種1、2年目の幼若なターフでは、夏季の葉腐病(ブラウンパッチ)のように大型、不整形のパッチ、被害も大。
- 非積雪下の冬季のベントグリーンでは、同時に紅色雪腐病の発生することもあるが、紅色雪腐病は径10cm前後で、褐色で小さく、やがて周りが淡紅色~赤紫色になるか、あるいは融合して不整形のパッチに拡大していくので、本病とは区別がつく。
- オーバーシードしたライグラスにも発生するが、被害は軽い。
写真10:黄色のパッチ(中央部:ペレニアルライグラス上)と
褐色のパッチ(周り:クリーピングベントグラス上)
写真11:湿室内で形成させた気中菌糸
写真12:各種の病斑
発生消長と防除期
発生条件
- 主にベントグリーンに発生、またライグラスにも発生(写真10参照)。
- 窒素肥料が多いと発生しやすい。
- サンドグリーンで発生しやすい。
- 床土が比較的乾燥し、表層のみ湿った所で発生しやすい(写真13,14参照)。
- 防霜ネットをかけて激発したことがある(写真15参照)
写真13:木立に囲まれた日当たりの悪いサブグリーン
写真14:同左のサブグリーンは遅くまで朝露が残り、本病が多発
写真15:防霜ネットを長期間かけ放置したサブグリーンに大発生したイエローパッチ
防除
<予防作業>
① 日常的には、サッチを除去。
② 窒素肥料の多用を避け、バランスのよい施肥。
③ 冬季でも潅水を怠らない。
④ 発生を未然に防ぐ必要がある場合には、薬剤散布。
<治療対策>
通常、本病によって枯死することはないが、使用頻度が低いグリーンなどで防霜ネットをかけ長く放置して激発したことがある(写真参照)。
しかし、シバの生育が悪い時期であるため、パッチは消失しない。
写真16:防除試験
(上:イソプロチオラン・フルトラニル剤,
下:ポリオキシン剤,右:無散布)
3発生履歴
2001.1
ウインターブラウンパッチ(兵庫県東地区)
2001.11
疑似葉腐病(ウインターパッチ)(兵庫県宝塚市)
2002.12
疑似葉腐病(ウインターブラウンパッチ)
4引用
第一研究室(2003-Jan.).病害情報ネットワーク:疑似葉腐病[イエローパッチ(ウインターパッチ)].ターフニュースNo.87:25~30.