ダラースポット病
目次
1標準的な症状
病名 | ダラースポット病 |
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英語名 | Dollar spot |
学名 | Sclerotinia homoeocarpa F.T.Bennett |
病原体 | 菌糸幅3.3μm~8.3μm,平均5.2μm |
融合が見られるダラースポット病
(写真1)
発生初期の罹病葉上に蔓延する菌糸
(写真2)
発生初期の罹病葉上を分岐、伸張する菌糸
(写真3)
発生初期の罹病葉上を分岐、伸張する菌糸
(写真4)
発生初期~中期における菌糸の葉面から侵入
(写真5)
侵入菌糸と宿主組織の損傷状況
(写真6)
宿主内での増殖後にみられる本菌菌糸の宿主からの脱出
(写真7)
2診断のポイントと対策
① 初期には直径1~2cmの黄緑色~淡褐色の沈んだようなスポット(写真8)が、
主としてグリーン周辺部に散在。
② 発生の中~後期にはスポットが拡大融合し、灰白色の不整形のパッチ(写真1と9の右)となる。
病勢が強いと、地下部まで侵されて枯れこんで裸地化していく(写真9の右)。
写真右のとくに、グリーンカラーなど高めに刈ったシバでは、枯れ込みが激しい。
感染葉上の病斑は、初め退緑を起こし、続いて水浸状になって最終的には脱色されたようになる(写真10,11)。
また、病斑は黄褐色~赤褐色の縁で区切られているのが特徴で、この病斑が葉全体に広がる。
病斑は砂時計のような形になることもある。
一般に葉先から枯れ上がる(写真12)。
赤葉腐、カッパースポット病、葉腐病(ブラウンパッチ)、ピシウム病などと混同しやすい。
※進行中のパッチの縁からボールマーク大のサンプルを採集し、ビニール袋内の湿室(写真13)に室温で一夜保つと、灰白色くもの巣状の菌糸の集塊(写真14)をサンプル上に生じるので、確認できる。
しかし、この状態ではピシウム菌、ニグロスポラ菌、リゾクトニア菌との区別が困難である。
念のため本病であることを最終確認するには、白色、有隔の病原菌がシバ体内に侵入し、細胞壁を貫通して蔓延していることを顕微鏡観察する(写真2~7)。
朝露とくもの巣状の本菌の菌糸塊
(写真8)
罹病部位にみられる菌叢
(写真9)
病気がかなり進行した部位にみられる菌叢
(写真10)
各種の病斑
(写真11)
ビニール袋の湿室内で形成させた菌糸塊
(写真12)
罹病部位にみられる菌叢
(写真13)
3ダラースポット病の特徴
発生条件
- 宿主範囲は広く、洋芝以外にコウライシバ、ノシバを侵すが、実害のあるのはベントグラスである。
- 排水のよいサンドグリーンで発生しやすい。
- 木陰で風通しが悪く、露が長く残るところには発生しやすく、盛夏でも進行する。
- グリーンの周辺部に発生しやすい(写真15,16)。
- 窒素肥料が不足すると発生しやすい。
- グリーンモアにより罹病葉が健全部に飛散すると、直線的に発生することもある。
窒素肥料を少なくして管理しているグリーン
(写真15)
枯れ込みを伴ったダラースポット病の発生状況
(写真16)
防除
<予防作業>
① 抵抗性品種を用いる。
② 根部の過乾燥(軽い乾燥害)を避ける。
③ 木陰で風通しが悪く、露が長く残るところは改善する。
④ 窒素不足にしない。
⑤ グリーンモアなどでの伝播を防ぐように注意する。
⑥ 本病に続いて炭疽病、葉腐病(ブラウンパッチ)、赤焼病やピシウム病が発生してくるので、これらに有効な混合剤を用いるとよい。
<治療対策>
① 抗菌スペクトルが狭く、浸透性のある治療効果が高い殺菌剤を散布する(写真17の右半分)。
② 晩春~初夏の発生にはスポット散布でこと足りるが、入梅期の激発時には全面散布が求められる(写真17)。
晩夏~初夏の発生に対してでも、防除適期を逃しかつ窒素不足にしておくと、芽数が減ったままで部分的に裸地化する(写真15,16)。
秋に発生して融合したパッチは跡は、回復することなく張り変えが必要となる。
多発したダラースポット病に対する殺菌剤の治療効果
(写真17)
4発生履歴
2003.4
ダラースポット病