芝地の雑草の見分け方 (17)

−スミレの仲間−


<はじめに>

 今回はスミレの仲間について述べる。スミレ科(Violaceae)で、日本にはスミレ属(Viola)約50種がある。いずれも多年草で春に咲き、花の色は紫、うすい空色、白、黄などがある。スミレ(菫)というの和名は花を横から見ると大工が使う墨入れに似ているためともいわれているが定かではない。属名のViolaは古いラテン語の植物名で、命名当時はアブラナ科の一種をさしたものと考えられている。種名のmandshuricaは‘満州産の’の意味である。

 タチツボスミレの名はツボスミレに似ていて、茎がやや立つためで、種名のgrypocerasは‘曲がった角’という意味で、その距(きょ)をいう。

<共通点>

 多年草で春に開花する。単葉で基部には托葉をつける。花は左右相称となり、下の1弁はときに大形となって唇弁(しんべん)といい、左右に側弁と上弁を2枚ずつつけ、基部は後ろに突き出て距(きょ)をつける。1個の花柱の周りにおしべ5個が取り巻く。果実はさく果。

<見分け方>

 見分け方のポイントをまとめると写真下の説明のようになる。葉の形、翼、毛の有無、托葉の形。花の色、毛の有無。距の形、長さなどで見分ける。

<その他の類似雑草>

 ノジスミレ(野路菫)Viola yedoensis Mak.葉が立たず、平開する。葉の両面に短い白い毛が生え、葉の裏面が紫色を帯びることが多い。葉柄の翼は狭い。スミレよりも早く咲く。花はスミレと同じ濃紫色だが、側弁は無毛。

 ヒメスミレ(姫菫)Viola minor(Mak.)Mak.花の色は濃紫色で最もスミレに近いが、径が1〜1.5pと小さい。葉の基部はハート形にくぼみ、葉柄に翼がない。

 コスミレ(小菫)Viola japonica Langsd.葉は卵形でまばらに毛があるかほとんど無毛。果実時には広卵形または三角状長卵形になる。葉柄には狭い翼がある。花は大きく淡藍紫色。

 ツボスミレ(坪菫)Viola verecunda A. Grayツボ(坪)とは庭のことで、庭に咲くスミレ。葉はタチツボスミレと同じくハート形だが、裏面は紫色を帯び、托葉は切れ込みがほとんどない。花は白色で、唇弁に紫色の筋が多数入り目立つ。距は丸みがあって短い。

<発生生態>

 スミレの仲間は日当たりを好むため、刈り込まれた芝地は生育しやすい環境である。タチボスミレは木の下のようなところでも、少し日が入ればよく花を咲かせる。 スミレは春の開放花以外に、晩春から夏にかけて閉鎖花を盛んに作り、つぼみのまま同花受粉をして果実となる。閉鎖花の方が結実率は高い。

 果実は熟して3裂するが、初め種子は果皮片の中に挟まれていて、果皮片が乾くにつれ種子を次々に跳ね飛ばしていく。種子には種枕と呼ばれる部分にアリの好む物質がついていて、アリが種子を巣に運んでいく。このようにして広がっていく。

<参考文献>

長田武正著:原色日本帰化植物図鑑(1976,保育社) 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七編著:日本帰化雑草植物写真図鑑(2001,全国農村教育協会) 廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン) 牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館) 浅野貞夫・廣田伸七編著:図と写真で見る似た草80種の見分け方(2002,全国農村教育協会) 大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物U(1967,保育社) 林弥栄総監修/畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道監修:野草見分け方のポイント図鑑(2003,講談社) 浅野貞夫著:浅野貞夫 日本植物生態図鑑(2005,全国農村教育協会) 清水建美編:日本の帰化植物(2003,平凡社)



▼スミレ Viola mandshurica W. Becker

sumire001

sumire002

生活型: 多年草。全体無毛。(写真は4月)

茎:地上茎はなく、葉や花茎は根元からでる。

sumire003

sumire004

sumire005

葉:長楕円状披針形で根生し、斜めに立つ。
  葉柄に幅の広い翼がある。

托葉:深い切れ込みはない。

白花のものも見られる。

sumire006

sumire007

sumire008

花:濃紫色で径2cm前後。
  側弁に白い毛がある。

果実:そう果は3個に裂開する

根:茶褐色


▼タチツボスミレ Viola grypoceras A. Gray

sumire009

sumire010

生活型:多年草。(写真は4月)群生することが多い。

茎:有茎種。咲きはじめのときは地上茎が目立たないが、しだいに茎を斜上させる。

sumire011

sumire012

葉:心(ハート)形で長さも幅も2〜3.5p。
  変化が多く大小、葉の形や厚みが変わりやすい。

托葉:櫛歯状に深く裂けている。

sumire013

sumire014

sumire015

花:うすい空色または淡紫色と変化が多い。

果実(写真は5月)

地下部