芝地の雑草の見分け方と防除 (6)
−オオアレチノギクとヒメムカシヨモギ−
<はじめに>
今回はオオアレチノギクとヒメムカシヨモギについてみる。ヒメムカシヨモギは明治維新のころ渡来したので、“ご維新草”、“明治草”の別名がある。また、明治政府の重要な仕事であった鉄道敷設に伴って広がっていったので、“鉄道草”の名もある。和名はヒメ(小さい)ムカシヨモギの意で、頭花が小さいためで、草丈は高い。
オオアレチノギクはずっと遅く1920年前後に入り、先に(1890年前後)渡来したアレチノギクを駆逐しながらほとんど全国的に広がった。和名は大形の荒地の野菊の意。
<共通点>
いずれも越年草で、秋に発生しロゼットで越冬する。翌春茎がたちあがってくる。茎の上部に円錐花序ができ、多数の頭花をつける。果実は痩果で冠毛があり、広く飛散する。
<見分け方>
葉の毛の生え方、頭花の形、幅、舌状花が目立つかで見分けられる。
見分け方をまとめると下の表のようになる。
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オオアレチノギク
Conyza sumatrensis Walker.
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ヒメムカシヨモギ
Erigeron canadensis L.
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茎
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軟毛が密生。
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立ったあらい長い毛が生える。
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葉
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葉の両面、特に下面に軟毛が密生。
葉は厚く、手で触るとビロード状。
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根生葉の主脈は紫色を帯びる。
葉のヘリや主脈上に長い毛がある。
葉は薄く、手で触るとざらつく。
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花
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舌状花はあるが、淡褐色で小さくて、総苞からほとんど出ず目立たない。
頭花は徳利形で、径3〜4mmで大きい。
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ちいさいが明らかな白い舌状花がある。
頭花は俵形で、径2〜3mmで、小さいが多数つく。
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その他
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南アメリカ原産。
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北アメリカ原産。
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は見分け方の重要点を示す。
<その他の類似雑草>
アレチノギク Conyza bonariensis Cronq. :茎は直立し主幹の成長が止まって側枝がそれより高くなる。高さ30〜50cmでオオアレチノギクより背丈が低く、葉幅が狭くてしばしばよじれる。頭花は樽型で、幅5mmくらいで、オオアレチノギクよりさらに大きい。舌状花は白色ときに暗紫色で小さくて総苞の外に出ない。花期6〜8月。南アメリカ原産帰化植物。
ケナシヒメムカシヨモギ Erigeron pusillus Nutt. :ヒメムカシヨモギによく似るが、全体がやややせた感じで、茎・葉ともに無毛、又はあってもごく少ない。葉はもっと細く、茎上の葉は鋸歯がほとんどない。頭花もやや小さく、総苞は無毛で、各片の先端近くに暗紫色の斑点がある。
<発生生態と防除>
キク科なので花期まで放っておくと冠毛で遠くまでたくさん広がってしまうので、それまでに刈り込む。 化学的防除は、秋(9〜10月)頃の発生初期にSU剤あるいはホルモン剤を処理する。12月頃になると葉面は硬くなり薬剤が吸収されにくくなるので、11月中に処理するか翌春にホルモン剤を処理する。
オオアレチノギク
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幼苗。秋に発生。(11月撮影) |
ロゼットで越冬する。根生葉は倒披針形で、あらい鋸歯がある。葉の両面、特に下面に軟毛が密生。葉は厚く、手で触るとビロード状。
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茎は直立で、白色短毛が密生し、白っぽく見える。
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茎の上部は円錐花序となり、多数の頭花をつける。冠毛は淡褐色。
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舌状花はあるが、淡褐色で小さく、総苞の外にはほとんど出ない。頭花は徳利形で基の方が少し膨らみ、径3〜4mmで大きい。花期は7〜10月。(7月撮影)
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草丈は80〜180cmになり、アレチノギクより大きくなる。(6月撮影)
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ヒメムカシヨモギ
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秋に発生しロゼットで越冬する。主脈が紫色を帯びる。根生葉はへら形であらい鋸歯がある。(1月撮影)
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葉のヘリや主脈上に白く長い毛がある。
葉は薄く、手で触るとざらつく。 (6月撮影)
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茎には立ったあらい長い毛が生える。
草丈80〜180cm。(6月撮影)
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茎の上部が円錐花序となり、頭花が多数つく。
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頭花に小さいが目立つ白色舌状花がある。頭花は俵状で径2〜3mmで小さい。花期は8〜10月。
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左:オオアレチノギクの葉の裏
真中:ヒメムカシヨモギの葉の裏
右:ケナシヒメムカシヨモギの葉の裏
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オオアレチノギクの葉の裏:葉の両面、特に下面に軟毛が密生。葉は厚く、手で触るとビロード状。
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ヒメムカシヨモギの葉の裏:葉のヘリや主脈上に白く長い毛がある。葉は薄く、手で触るとざらつく。
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ケナシヒメムカシヨモギの葉の裏:葉は無毛、又はあってもごく少ない。葉はもっと細く、茎上の葉は鋸歯がほとんどない。
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