マツ材線虫病(松枯れ)に対する樹幹注入剤(ミルベメクチン)の効果

写真@:ここ1〜2年のうちに樹勢が衰えはじめたもの(矢印)

 はじめに

 最近、寒冷地で「年超し枯れ」のマツ類が目立つ。これはマツノザイセンチュウ(以下センチュウ)が潜入しても、その年に松枯れを起こさず、次年度の春から夏にかけて起こすもので、冬季に樹幹注入をしても、薬剤の効果が現れない場合が多い。そこでその対策について考えた。

 調査地

 山岳地帯(標高400m)に位置する阿騎野ゴルフ倶楽部(奈良県大宇陀町)では、周囲のマツ類の殆ど(90%近く)が松枯れを起こしており、ゴルフ場内のクロマツも大きな被害を受けていた。

写真A:萎凋症状(矢印)のごく初期までのもの

写真B:部分的黄化症状(矢印)を示すもの

 調査方法

 場内のクロマツ41本を選んでミルベメクチン剤の樹幹注入をし、線虫調査、松脂調査、樹勢の衰え(写真@)、萎凋症状(写真A)、部分的黄化症状(写真B)などの達観調査をした。

 なお、供試クロマツの一部は森林総合研究所に鑑定を依頼し、マツノザイセンチュウによる被害であることを確認した(写真C〜F)。

写真C:マツノザイセンチュウ(雌)

写真D:マツノザイセンチュウ(雌)

陰門蓋;右下の陰門部に薄くかぶる蓋(矢印)が見える。この部分がマツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウを見分ける際の指標となる部分

写真E:マツノザイセンチュウ(雄)

尾が鉤爪状に曲がっている

写真F:先の黒く見える部分が口針

 調査結果

第1表から以下の結果が得られた。

@供試マツの50%以上は、樹幹注入を施工する前にマツノザイセンチュウが侵入していた。

A平成14年11月22日までの調査では、3月および9月に枯死して伐採した4本のクロマツ以外には何ら異常は見られなかった。

B施工時に枝枯れや萎凋症状を呈していて、枯死が十分に予測された4本の内の2本は、松枯れを起こして9月までに伐採されたが、残り2本は樹勢を回復して外見上健全であった。

 

 

第1表のデータから第2表を作成した。

第2表からは以下の結果が得られた。

@    松脂の流出量が多いクロマツ12本の中の約半数には、樹幹注入時にセンチュウが生息していたにもかかわらず、すべて健全に生育していた。

A    松脂流出量が少ない20本の8割以上にはセンチュウが認められ、その3割強はすでに僅かに葉色不良などの衰弱症状を示していた。しかし、当年中に枯死、伐採したものは2本のみで、9割近くが健全に生育していた。

参考文献

一谷多喜郎・井村光男・福岡省三(2003-3).

マツ材線虫病(松枯れ)に対する樹幹注入剤(ミルベメクチン)の効果.グリーン研究報告集 vol.83:53-58.