ベントグリーンにおける病害の年間発生調査

1.目的

 平成14(2002)年1〜12月に兵庫県内の1ゴルフ場で病害の発生調査を行い、これと気象データ及び管理実績を合わせて考察する。

2.材料と方法
1)材料
調査地:宝塚ゴルフ倶楽部(宝塚市蔵人字深谷1391−1,標高約100m)
旧コースの1〜11番のグリーン(平均441u)
 草種:クリーピングベントグラス(ペンクロス)
例年、激しい色むら(赤紫色、黄褐色、黒紫色などの斑点、いわゆるアントシアン斑)が、10月半ばに現れ翌年の4月中旬に消失していた。
2)調査方法
 原則として毎週1回休場日に広義の病害[伝染性病害と生理障害(生理病)]の発生調査を行った。  病害標本の採取、細菌を含む病原の顕微鏡による観察・記録、菌の分離、分離菌の形態記載、接種試験、気象データ(気温℃と雨量mm)の計測などは、既報1-4)方法に準拠した。グリーンの管理記録は、コース管理部に保存されたものによった。

3.結果と考察

結果は表−1に示す。

◆表−1のまとめ

●1〜4,5月にフェアリーリング病が発生(コアリングと目砂で消失)。

●3月のコアリングと目砂により、4月に軽い生理障害が発生。

●4月からドライスポットが発生。

●6月からはダラースポット病が木立ちに囲まれたグリーン(1,2,4番)で発生した。

●7月には、これまでに発生していた各種病害のほかに、炭疽病とピシウム性黄化症、藻類(Phormidium spp.)が新たに発生し、ダラースポット病が再発した。

●8月にはピシウム性黄化症と藻類に加え、特に下旬にはドライスポットが多発した。

●9月にはダラースポット病の3回目の発生と生理障害が目立ち、この傾向は10月まで続いた。

●10月下旬から11月にかけてドライスポットが発生した。

●12月には注意すべき病害の発生は認められなかった。

◆以上に述べた病害の月別発生状況

●1〜3月には注目すべき病害を認めず。

●4月の注目すべき病害は主に生理障害。

●5〜6月には、重要病害をほとんど認めず。

●7月には、4種類の病害―特に藻類と生理障害が高率に発生。

●8月には、生理障害、藻類、ドライスポットが主に発生。

●9月〜10月には、生理障害が主に認められ、ドライスポット、ダラースポット病も注目すべき病害であった。

●11月以降の発生率は低く、重要病害を認めず。

◆一年を通じて注目すべき病害の発生割合

●生理障害が最も多く、藻類、ドライスポットがこれにつぎ、ダラースポット病はやや低かった。(非生物伝染性病害が6割を超え、これが極めて重要)。

◆日常注意すべき病害の再発状況

●生物性病原と非生物性病原による被害がそれぞれ発生したグリーン数では差がなかったが、非生物性病原による被害の再発回数は生物性病原によるものの約2倍あった。

●グリーン別に病害の発生状況(病害数とその発生回数)を見たが、グリーンの環境条件(周囲における木立の有無、日照、風通しなど)との間に関係は、認められなかった。

◆調査期間中の気象データ(平均気温と雨量)と病害発生との関係

●4月中旬と5月中旬に降雨があり、この時期に木立ちに囲まれたグリーンでフェアリーリング病が発生した。一方、本病の発生暦があるグリーンでは、周囲に木立がないのにフェアリーリング病を再発させた(これらのフェアリーリング病は、目砂のみ、あるいは十字タインによるフォーキングで消失した)。

●降雨があって木立に囲まれているグリーンで、ドライスポットがその他のグリーンに先立って初めて発生した。

●5月下旬から6月中旬にかけて雨は少なかったが、木立に囲まれたグリーンでダラースポット病が初めて発生した。しかし、本格的な発生は、雨量が増えた7月に入ってからであった。

●梅雨あけから8月13日を除く8月末までまとまった雨がなく、8月下旬にはドライスポットが一斉に発生した。

●秋には適量の雨があって気温も徐々に下がり、被害の大きな病害は認められなくなった。

●診断が比較的容易な葉枯細菌病(Xanthomonas sp.)に限って検出を試みたが、全く認められなかった。

平成13(2001)、平成14(2002)年度のグリーン管理記録によると、

●同一の除藻剤を同一量使った両年の除藻剤の経費間には差を認めなかった。

●2002年度に使った殺菌剤の種類数と量は減少したので、殺菌剤では前年に比べて経費節減になった。

4.引用文献

 1)  一谷多喜郎(2001).2つのタイプの疑似葉腐病(ウインターパッチ).グリーンニュース60:13-18.

 2)  一谷多喜郎(2002).冬のグリーンにおける定期病害調査.同誌61:2-7.

 3)  第一研究室(2002).現場における細菌病の簡易診断.ターフニュース83:25-28.

 4)  第一・三研究室(2002).ベントグリーンで細菌病を起こした病原細菌の経時的観察.同誌84:20-24.

 本調査は、一谷多喜郎・宮島葉子[(財)関西グリーン研究所]・中西 恒[宝塚ゴルフ倶楽部](2003).ベントグリーンにおける病害の年間発生調査.芝草研究第23巻別1号(大会誌)に発表したものである。