病 名 立枯病(日本芝) 病原体(学名)

Phialophora sp.1)

菌糸幅:3〜5μm

生育温度範囲:4〜38℃

最適温度範囲:29℃

英 名 Zoysia decline

写真@春季のコウライグリーンにおける中期の症状

写真A菌足

写真B偽柔組織

写真C培養菌叢(25℃、PDA培地上、1ヶ月後)

写真D菌糸生育適温試験(左から4、15、20、26、29、32、35、38℃、PDA培地、2週間後)


症 状(診断のポイント)

 葉腐病(ラージパッチ)や疑似葉腐病(春はげ症)対策を取っていても、なお春先に周囲が不鮮明な灰色〜褐色の個所(パッチ)が小さく不規則に入り混じり、直径10cm以下から50cmぐらいの不整形、円形のパッチを形成(写真@)。パッチ内のシバの外側の葉は、先端から黄〜黄褐色(写真E−右)、あるいは緑のまま巻いて枯死。枯死部は裸地化し(写真F)、その大きさは一定していない。このようにしてパッチ内の芽数は減少。枯死しなかった株は、新根形成が遅れるが、梅雨期には回復(写真G)。激発時には、裸地化した枯死部は梅雨期でも回復することなく、被害痕跡は秋まで残る。秋にはこの被害痕跡から再発してくることが多い。

診断のポイント:

@   パッチの縁の罹病個体の地際部は黒褐色〜黒色を呈し(写真E−右)

A   このような個体の古い葉鞘を除去し、その内側の比較的新しい病斑部にはルーペにより黒い鉄粉状のものを認める。この部位には顕微鏡により病原菌に特徴的な偽柔組織(写真B)と裂片状の菌足(写真A)を認める。

写真E外見上健全株(左)と罹病株(右)

写真F春季のティにおける激発状況(残っているのはフツウコウライシバで、細葉のコウライシバは全滅)

写真G順調に治癒中(ランナーが伸長中、晩春、フェアーウェー)

▽:予防作業の時期 ▼:治療対策期


発 生 条 件

 細葉のコウライシバは高感受性(写真F)。しかし、普通のコウライシバやノシバにも発生。張り芝をして数年間はよく発生。病原菌は春と秋に生体内でよく生育。


防  除

 本病はゴルフ場において診断が困難な重要病害の1つである2)。本病には、同時期に発生する1,2の病害が混発あるいは併発(写真H)、また少し時期を違えて別の病気が同じ個所に発生してくることがある3)。そこで、防除後にはシバの本病からの回復状況に注意を払い4)、薬剤の選択や散布時期が正しかったかどうか検討を加える。また、麦類の立枯病では、発病後数年が経過すると自然治癒していくと言われている。従って、あまり目につかないところで発生し、しかも軽微な場合には、殺菌剤を使わずに耕種的方法のみで十分対応できる。

予防作業― @床土のpHが高い時には、酸性窒素肥料などを施し、pHを少しでも下げる。
A適度の潅水をして乾燥を防ぐ。
治療対策―

@症状が軽い場合:更新作業の回数を増やすだけで治癒する。

A激発の場合:予防作業に加えて春と秋に薬剤散布5)。この場合、特に秋の薬剤散布はていねいに行い、病原菌の活動を抑えて秋に受ける被害をできるだけ少なくし、病害痕跡を翌春に持ち越さぬようにする。また、春の散布は病原菌の活動を抑えてシバの順調な生育を助け、被害跡をなくすために行う。さらに激発時には、このような春秋の薬剤散布ほかに、更新作業(写真I)の回数を増やすと防除効果は一層高まる6)

写真H葉腐病(ラージパッチ、手前2/3)との併発(フェアーウェー)

写真Iコアリング作業


備  考

 1)病原菌はGaeumannomyces graminis var. graminisと推定されたが、子のう殻は未確認で完全に同定されていない。

 2)一谷多喜郎・宮島葉子(2001).ゴルフ場において診断が困難な重要病害の発生動向.芝草研究30(別1):114-115.

 3)一谷多喜郎(1999).罹病シバ組織に観察される2種類の病原菌と殺菌剤によるその防除例.グリーンニュース54:2-9

 4)一谷多喜郎・宮島葉子・山田 明(1998).芝草病害の病勢と罹病組織中における病原菌の生育・生存形態との関係.グリーン研究報告集73:67-70.

 5)第一研究室(1998).コウライシバの生育不良症対策―薬剤防除効果.ターフニュース67:22-25.

 6)一谷多喜郎(2001).メトキシアクリレート系殺菌剤と更新作業によるコウライシバの“しずみ症”対策.グリーンニュース59:3-6